北日高の山々に遊ぶ!

ピパイロ岳(1917m)1967m峰 北戸蔦別岳(1912m)戸蔦別岳(1959m)

2010.7.16~18

土田 猛

 2008年は1839m峰、ペテガリ岳と自分としては大きな登山を行ったが、2009年夏は天候不順で雨の日が多く、日高にはご無沙汰していた。2010年の今夏も昨年同様パッと晴れた日が少ない。それでも何とか天気予報と相談して今回の山行を計画した。ピパイロ岳1967m峰 北戸蔦別岳戸蔦別岳⇌幌尻岳を結ぶこの縦走路は、雄大な北日高の山並みを一望できる比較的快適な「1級国道」と言われている。

 北戸蔦別岳と虫の乱舞(7/16

16日(金) 4時半札幌発。日高北部森林管理署で入林許可書と林道ゲートの鍵を受け取り、チロロ林道に向かう。慎重に走って二岐沢出合に着いたが、一台の車もない。この先はゲートがあり車は通行できない。天気は晴れそうである。約24kgの荷物を背負って取水ダムまで3kmの林道歩きに50分ほどかかった。二岐沢から二の沢へと入り、踏み後を見つけ、渡渉を繰り返しながら進むと、次第にコースは細く急になり、右手に2つの小滝が現れると、やがて尾根への取り付きになる。雨後の滑りやすい急坂を喘ぎながら登ると途中に熊の落し物があった。やがて「トッタの泉」の湧水箇所に辿りつく。ここで水5ℓほど補充した。一段と重くなったザックに喘ぎながらの苦しい登山が続く。ヌカビラ岳手前の岩峰が見えた時には、何とか登れそうな見通しがたちほっとした。
ヌカビラ岳を越えて北戸蔦別岳へ向かう稜線上にはまだ雪渓が残り、お花畑にはツガザクラやチングルマなど色とりどりの花が咲き乱れていた。熊の掘り返しも至るところに見られたが、古いものなので恐怖感はない。この頃から、両太腿の内側が攣りだし激しく痛み出した。休憩をとりながら、牛歩の歩みで何とか乗り切り、
15時過ぎ北戸蔦別岳山頂に辿りついた。
誰もいない山頂には羽蟻のような虫の大乱舞が繰広げられていた。午後から発生したガスで北日高の展望はなく、虫のダンスが治まるまで腰を下ろして呆然としていた。少し治まったところでテントを張り、ビ-ルで乾杯した。服についたダニを払わずにテントに入ったものだから、ひどい目にあった。数匹のダニを見つけて潰したが、まだいたようだ。翌朝、右腕の脇の下に食い込んだダニは、帰宅して救急病院で処置してもらうまで2日間行動を共にした。それにしても処置費が
4500円も掛かり、改めて医療費の高さに驚いた。

 1967m峰へと続く奇岩群

 1967m峰山頂、背後にピパイロ岳(中央)と伏美岳(右)

17日(土) 3時半起床。昨夜は風がなかったが、小雨が時々ぱらついた。4時半になっても小雨が降り続き、ガスで視界はない。天気予報では朝晩ガスだが、日中には晴れ間が出そうだ。コーヒーを入れて軽い朝食を済ませ、ピパイロ岳へ向かう準備をして天候回復を待つ。6時に雨は止んだが、北西斜面からどんどんガスが吹き上がってくる。晴れることを期待して、雨具上下を着けて出発した。30分もするとやがて上空に太陽が顔を出してきた。だがガスの流れは絶間なく、山並みは見え隠れを繰り返す。縦走路のハイ松帯も浅く、踏み後もしっかりついていて何の不安もない。1967m峰手前には岩峰のアップダウンが続き、谷底までスッパリと切れ落ちている箇所は要注意だろう。1967m峰もどっしりとした立派な山だが、1839m峰と同様に無名峰である。

 1967m峰山頂より、ピパイロ岳(中央)と伏美岳(右奥)

山頂で写真を撮りピパイロ岳に向かうが、道を間違い10分以上ロスした。一旦下って登り返し、ピパイロの肩を経て、1020分誰もいないピパイロ岳に到着した。伏美岳、妙敷山、十勝幌尻岳、札内岳、エサオマントッタベツ岳など懐かしい山々との再会を喜ぶ。エサオマントッタベツ岳の背後にはカムイエクウチカウシ山が見え隠れする。幌尻岳や戸蔦別岳方面にはまだガスが流れ全容を現さない。伏美岳から縦走してくる人の気配も全くない。山頂で口にしたグレープフルーツは、冷たくはなかったがとても美味しかった。新調したばかりの雨具のズボンは、ハイ松の切り株や石で擦れて、至るところに穴が空き、松脂が酷かった(トホホ、、)。30分ほど山頂を独り占めし、往路を戻る。縦走路の南東斜面に広がるお花畑の高山植物が、疲れを癒してくれる。

 ピパイロ岳山頂、1967m峰(中央)と北戸蔦別岳(左端)

14
時に北戸蔦別岳に戻ったが、私のテント1張のみで他の登山者は見当たらなかった。天気が良ければ、明日は戸蔦別岳を経て七つ沼カールと幌尻岳を予定していたが、雨の予報なので今日中に戸蔦別岳まで行って見ることにする。カロリーメート一切れと紅茶で一息入れた後、戸蔦別岳へ向かったが、道の中程で戻ってくる単独行者2人に出会った。50分ほどで戸蔦別岳山頂に着くが、ここで七つ沼カールに泊まるという3人組が休んでいた。彼等と会話をしながらまったりしていると、ガスが上がって晴れ渡り、縦走してきたピパイロ岳、1967m峰、北戸蔦別岳の峰々や幌尻岳など北日高の山々の全貌が見渡せた。
360度の見事な眺望だ。苦労が報われる至福の瞬間だ。

 戸蔦別岳より、幌尻岳と七つ沼カール(左)

雪渓を抱いた七つ沼カールも見事で、テント泊の誘惑には抗し難いが次回の楽しみにしよう。16時半、北戸蔦別岳に戻り温いビールで祝杯を上げた。単独行者達は下山したらしく、今夜も私一人らしい。テント内でダニ1匹見つけて潰すと赤い血が吹き出た。疲れて横になりうつらうつらしていると、19時頃2人組が着いて隣にテントを張った。これで山頂の狭いテン場は満杯である。風が強くなり今夜は荒れそうだ。




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